2007年7月22日

けむりあな

「そういうインディアンたちには特別の儀式があったんだ。クラブハウスができて、そのことを思い出した。なにか重大な決定をするときは――バッファローの群れを追うべきか、新しい水を見つけにいくべきか、敵と闘うべきかというようなときにね――いつも地面に大きな穴を掘って、そいつを木の枝でおおうんだ。小さい穴を残して」
「け、け、けむりあな」ビルが言った。

スティーヴン・キング作 小尾芙佐訳 「IT」より引用 (文春文庫版)

 暑いのはまだいいとして、ジメジメした梅雨はどうにも気持ちがふさいでしかたありません。少しはなぐさめになるかと、インセンスを焚くことにしました。ところが、家にあるのはエスニック系の甘い香りのものばかり。もうちょっとすっきりした香りのものが欲しいなぁと考えるうち、以前ネィティヴアメリカンのジュエリーを買ったお店にインセンスがあったのを思い出しました。確か松や杉のものがあったはず、とページを見てみると、インセンスはもちろん、素焼きの素朴でいい感じのバーナーもあります。お香もセットになっていたため、ついつい2個も買ってしまいました。そのうちのひとつがこれ。

Kiva  ※ちょっと画像いじりました

 ネイティヴアメリカンが儀式を行う神聖な場所をかたどったものだそうで、キヴァというそうです。地下に穴を掘り、枝などで上に屋根を葺いてあるとのこと。そこで思い出したのが「IT」の中にある、冒頭の引用部分でした。

 ものがたりの少年少女たちは、何かに導かれるようにキヴァのことを知り、ある目的のためにみずからキヴァを作って中に降り、煙で燻して幻視を見るという儀式を行うのです。「IT」の中で私が最も好きな場面のひとつなのですが、文中にキヴァという名前は出てきません。このインセンスバーナーを見て初めて名前があることを知りました。

 セットになっていたインセンスはPinon(松)とCedar(杉)。両方ともちょっと甘い木の香りがします。形も独特で、普通アジアンなインセンスは線香かコーンの形をしていますが、これは幅と厚みが1cm、長さが3cmくらいの棒状です。おがくずをぎゅっと圧縮したような感じで、この時点からなんとなくデジャヴな気分…と思っていたのですが、火をつけて焚いてみて納得しました。

 これは、燻製のチップにそっくりだ(笑)。

 まとめて焚いたら本当に燻製ができちゃいそうな香りで、立ち上る煙もお香のようなかぼそさがなく、元気イッパイもくもく出る感じです。ヘタなところに置くと、火災報知器が鳴っちゃうかもしれません。でもとても香ばしくて、玄関がいくぶんすっきりしました。

 そういえば、「IT」の中でも季節は夏、夏休みの間の出来事が書かれていましたっけ。蝉も鳴きはじめたし、梅雨もそろそろ明けそうです。

7月 22, 2007 言葉・コトバ | | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年3月 1日

秘密すぎたメモ

 ここで書こうと思いついたことを時々エディタにメモっておくのですが、お約束というかメモの王道というか、中には後から読んでも何を書きたかったかサッパリわからないモノがあります。今日もそんなのを見つけてしまいました。

 ナナシ
 純素9

 はて、ナナシっていったい何だろう……むかーしペルソナにそんな名前のNPCがいましたが、メガテンの話がどこかで出た覚えはないし……。次の純素9にいたっては、まるで電波にしか思えません(汗)。そもそも純素なんて言葉はないしね……。

 と、ここで9の数字を見て、そういえばカート・ヴォネガット氏の小説で、架空の物質アイスナインというのが出てきたなぁと思い出しました。「猫のゆりかご」という作品です。ちょっとあやふやな記憶ですが、個体になるときの性質が違う水が何種類かあって、その中で9番目にあたるモノ、という設定でした。凝固点が異常に高温なため、触れたものを瞬時に凍らせてしまう性質があり、話の中で重要な役割を果たしていました。

 彼は科学者出身なので、こういう学者っぽい小道具をよく登場させていた気がしますが、初めて読んだ時、理数系に疎い私にはひどく魅力的に思えましたっけ。

 結局、純素は何のことやらまるでわからずじまい。今度から、それをどう書こうとしたのかくらいまでは簡単にメモしておこうと思いました。単語だけだとキケンです。

3月 1, 2006 書籍・読書, 言葉・コトバ | | コメント (4) | トラックバック (0)

2006年2月10日

願わくば、願わくば

 あと1日でオリンピック開会ということで、テレビのアナウンサーやキャスターがヒバリのようにオリンピック!オリンピック!と叫びはじめました。スポーツ観戦は好きでも嫌いでもないので、オリンピックといっても夏も冬もほとんど興味がないのですが、ひとつだけ、毎回イヤーな気持ちになる場面があります。

 それは、よい結果を出せなかった選手(とりわけマスコミに注目されていた選手)に対して、まったく関係のないそのへんの人が、「なーんだ」とか「ダメだったの、なさけないね」とか、ここまでストレートではないにしても、そういうニュアンスの言葉を吐くのを聞くときです。これには「日本勢まさかのメダル数、この責任はだれに!?」なんて感じの見出しをつける新聞や雑誌も含まれます。

 こういう時に私がムッとしてしまうのには、ふたつの理由があります。1つは単純に、

「その選手はあなたにお金や時間や知識を供出してもらって選手活動をしているわけじゃないのだから、そんなふうに罵倒する権利はない」

という気持ちから出るものです。昔からどうも、日本代表になるとたちまち有無を言わさず国民の期待を背負わされるという図式がキライなのです。国別対抗だから国の代表になっただけであって、競技を競うのは個人対個人です(団体競技でも基本は個人の能力)。結果が出せなくても、本人が悔しがったり落ちこんだりするだけで十分、コーチや家族はともかく、テレビカメラに向かってあやまる必要なんてないのです。

 二つ目の理由はかなり生意気というか、イヤなやつな発言かもしれません。が、ひょっとすると一つ目の理由よりもいつも強く感じていることかもしれません。それは、

「道を極める人の孤独を知らない者が、結果をどうのこうのいう筋合いはない」

という気持ちです。

 スポーツに限らず、何かを極めるというのは本当に孤独な作業です。言葉で書くと簡単に聞こえますが、本当の本当に孤独なひとりぼっちの世界なのです。なぜなら、それをやるのは自分しかいないからです。もちろん優秀なコーチやチームのおかげで続けていけるということはあるでしょう。でも、新しい技やより速いスピードは自分自身の中からしか生まれてきません。誰かからもらうことはできません。そしてたやすくは生まれません。

 本当にあきれるくらいあたりまえのことなんですが、少しでもこういう経験をしたり、あるいは経験中の人をずっと見てきたことがないと、なかなかわからない孤独感なのです。

 そして、おそらく、この孤独感がわかる人は、冒頭に書いたような物言いはしないでしょう。

 ここであんまり毒っぽいことは書かないようにしているのですが、もうオリンピックというと突然国粋主義者になる人とか、エラそうなにわか批評家とか、そういう手合いが毎回わんさか出てウンザリなので、どうしても一度自分の気持ちをまとめて書いてみたかったのです。

 願わくば、トリノにいる選手がみな、過ごした孤独に見合った結果が得られますように。でも得られなくてもそれは誰にあやまることでもなく、ただ淡々とそこにある事実なだけだと思ってもらえますように。

2月 10, 2006 言葉・コトバ | | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年1月19日

秘密の文字

 mixiの指輪物語コミュで、またおもしろいものを見つけました。任意の文章をテングワールに変換してくれるサイトです。場所はここ↓

Online Tengwar Transcriber

 テングワールとは指輪物語の作者トールキン氏が創作した架空文字で、乱暴にはしょって言うとエルフ文字です。トールキン氏は本職が言語学者で、指輪物語と中つ国の神話を書いたそもそもの目的は、自らが創ったエルフ語と文字、それに伴う文化的もろもろを集大成するためだったと聞いています。

 さっそく自分の名前とEQ名のNara Silverytuneを変換してみました。PNG形式を選んでアウトプットすれば、テングワールのフォントがインストールされていなくても大丈夫。

tengwar_parmaite tengwar_parmaite_nara

 当然ながら、読めませぬ(笑)。なので、先のエルフ語・ホビット語姓名変換に比べるとインパクトは弱いですが、これを見ていたら、強烈にカリグラフィーがやりたくなりました。これで作ったシグネチャをBBSに張りつけているアメリカ人って多そうだなぁ。ちょっとしゃれた文章を作ってPhotoshopで加工してもおもしろそうです。

 どうしてもテキストとして出したいんだ!という人は、下記のサイトでテングワールフォントがダウンロードできます(Windows版のみ)。力の指輪に彫られていた文字にそっくりな細身のフリーフォントもありました。

Dan Smith's Fantasy Fonts for Windows

 試してないので詳細は不明ですが、日本語キーボードだとキーマップなどの問題でエディタやワープロソフトでフォントを使う場合はうまくいかないかもしれません。対応表が複雑そうですし……と色々見ていたら、こちらのサイトなどは参考になりそうです。

赤龍館 J.R.R.トールキンの部屋

1月 19, 2006 書籍・読書, 言葉・コトバ | | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年1月 7日

海賊の歌

 死人(しびと)の箱には十五人 ヨーホホー
 それからラム酒がひと瓶と

 R・L・スティーヴンソン作 「宝島」 より引用 (確か古い偕成社の翻訳版です)

 初夢の話で「パイレーツ・オブ・カリビアン」のことにふれましたが、これをDVDで観た時には、当然のごとくかの名作「宝島」をなつかしく思い出しました。本を買ってもらったのは確か小学校低学年のころで、あまりのおもしろさに買ったその日に読破してしまい、両親をあきれさせたそうです。よい物語ほどコストパフォーマンスは悪いのです。

 引用した海賊の歌は、なかでもとりわけ印象深い部分で、初めて読んだ時は怖さと好奇心で心からゾクゾクしました。死人の箱って何?棺おけのこと?15人みんな死んでるの?ラム酒ってどんなお酒だろう。なんでラム酒がひと瓶なの?そしてシビトはどうなるの?

 後年アメリカへ行った時、やたらと明るいバカルディ・ラムの広告看板を見て、心の中で長年あたためていた、ほこりと手垢にまみれた毒々しく暗い酒瓶のイメージが、ガラガラと音をたてて崩れたのは言うまでもありません。大人になるということは時につまらない場合もあるというよい例です。

 この歌、死人に“しびと”とルビがふってあったと記憶しているのですが、いかんせん当時の本が手元にないので確実ではありません。でもここは“しにん”ではなくて“しびと”じゃないと絶対イヤです。「宝島」には岩波版もあるらしく、そちらでは「亡者の箱…」となっているらしいのですが、これもちょっと好きではありません。

 どうにも気になったので、古いダンボールをガサゴソと探してみたところ……ペーパーバックの原書が出てきました(汗)。いったいいつ買ったんだろう…。ページをくってみると、件の歌は、

"Fifteen men on the dead man's chest―
Yo-ho-ho, and a bottle of rum!"

となっています。個人的に、やはり“しびと”に軍配をあげます。

1月 7, 2006 児童書, 書籍・読書, 言葉・コトバ | | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年10月19日

秘密の名前

 mixiの指輪物語コミュに、おもしろいリンクがはってありました。自分の名前をエルフ語とホビット語に変換してくれるサイトです。こういう遊びは大好きなので、さっそく本名でやってみました。

エルフ名:Isilindil Helyanwe
ホビット名:Honeysuckle Foxburr of Loamsdown

 おお…エルフ名がなにやらかっこいい(笑)。正確にはeの上にウムラウト(上に‥が付く記号)がついています。イシリンディル・ヘルヤンウェ、と発音するのでしょうか。イシルは上のエルフ語で月を意味する言葉なので、月明かりの姫だ、わーいとひとりで盛り上がっておりました。ええアホです。

 ホビット名はほぼ現代英語ですね。名、姓、住んでいる場所と並べて、まとめて名前にしてあるようです。指輪物語の訳者である瀬田貞二氏ふうに訳すと「砂土山のぎざ狐家の蜂蜜吸い」でしょうか。ハニーサックルと書けばなかなかキュートな名です(アホ再び)。

 ここでふと思いついて、EQ時代のキャラクター名であるNara Silverytuneを変換してみました。すると、

エルフ名:Nessa Seregon(ネッサ・セレゴン)
ホビット名:Ruby Brockhouse of Loamsdown(砂土山のブロックハウス家のルビー)

 エルフ名がいきなり庶民的に!このキャラはハーフエルフでクラスがBardだったので、雰囲気はとても合っている気がします。セレゴンという言葉にうっすら記憶があったので、シルマリル物語を引っ張り出して索引を見てみたら、トゥーリンの話の中に出てきた、真紅の花をつける植物のことでした。ホビット名も紅色にちなんだRubyが入ってますね。しかも本名とご近所さんらしいです。

 単なる遊びですが、ファンタジー好きな人ならかなり楽しめます。
 エルフ名変換はここホビット名変換はここなので、さあみんなでレッツトライ。

10月 19, 2005 映画・テレビ, 書籍・読書, 言葉・コトバ | | コメント (12) | トラックバック (0)

2004年12月16日

商品の紹介文

 アントクアリウムという商品があります。東急ハンズでも売られていたので、かなり知名度は高いかもしれません。元はスペースシャトルにアリを載せて宇宙で実験するためにNASAが開発したもので、特殊なジェルで満たされた容器の中にアリを数匹入れ、巣を作っていく様子が観察できるというものです。

 子供のころ、透明なビンに土とアリを入れて同じようなことをした身としては、こんなものを買わなくてもアリの巣観察はできるのになぁと思うのですが、商品のキモはそこではなく、涼しげなアクアブルーのジェルに網目のように掘られたトンネルを、お部屋のインテリアとして楽しめる、ということみたいです。

 海外のサイトで紹介されているページも見てみたら、売り文句が日本のものと違っていておもしろかったです。日本のオンラインショップが「癒し系グッズ」という方向だったのに対して、あるイギリスのショップのサイトには、

あなたは神になれる。それもお手軽に。メンテナンスは簡単(要訳)。

と書かれていました。こういう発想は、日本人には生まれないもののひとつです。敬虔な信者であるなしにかかわらず、一神教の文化が血の中に染みこんでいるからだなぁと感じました。ちょっとオオゲサですけれど。

12月 16, 2004 言葉・コトバ | | コメント (2) | トラックバック (0)

2004年10月31日

辞書の秋

 EQ2の背景物語が大詰めに入ってきました。なんでも発売日が前倒しになったらしく、あと一週間以内に原文のほうは完結しそうです。

 こんな趣味でやってる翻訳ですが、辞書を引くのは意外に国語辞典のほうが多かったりします。漢字が正しいか、自分が考えている意味通りなのか、類似した言葉で別の言いまわしがないか ( これは本当は類語辞典が欲しいです ) などなど。いかにイイカゲンに言葉を覚えてるかってことですね。語彙も足りないなぁと思うことしばしばです。

 そんなわけで、国語辞典の新しいのと類語辞典が、欲しいものリストの上にのぼってきました。それから、昨日本屋で偶然見つけたこの本も今強烈に読みたいです。久々に本屋でドキドキするくらい読みたくなりました。

「ダンテ・クラブ」 マシュー・パール著

 うむ、やっぱり明日買おう。

10月 31, 2004 言葉・コトバ | | コメント (0) | トラックバック (0)

2004年5月28日

君の名は

 うちのハムスターの名前は「はるきち」というのですが、夫は絶対にこの名前で呼んでくれません。「ぽんきち」あるいは「ぽーきー」と言います。「はるきち」が気に入らないのなら名前を付けたときに教えてくれればよかったのに、とぼやくと、そうではない、と言うのです。

 「いみな」と「あざな」ってのをご存知でしょうか。前者が本当の名前、後者はいわゆるあだ名です。昔の中国なんかで身分の高い人や学者などが本名を知られるのを嫌う風習があり、あざな(字)をつけてずっとそれで呼んだり呼ばれたりしたそうです。夫は中国の古い歴史モノ(三国志などなど)が大好きなので、また持ち前のヘリクツぶりを発揮してこれを真似ているらしいのですが、うちの「はるきち」はねずみですよ、ねずみ!

 彼に言わせると、ねずみは全て「ぽんきち」があざななんだそうで…(泣)

5月 28, 2004 言葉・コトバ | | コメント (8) | トラックバック (0)